まとめ
早期に危険因子を発見し、拾い上げることも大切ですが、膵臓がんは進行が速い病気であるために、適切な精密検査を作成し、迅速に実行することも非常に重要です。この点も地域中核病院と連携し、迅速な対応が可能となっております。危険因子を有する方、定期検査を希望される方、膵臓が気になる方などは一度ご相談ください。
Pancreatic cancer
膵臓がんは近年増加傾向であり、あらゆるがんの中でも最も予後不良な悪性腫瘍です。早い段階では特徴的な症状もなく、内視鏡検査で観察可能な胃がんや大腸がんのように早期発見は非常に困難とされています。そのため、診断時に外科的に切除不能な進行した状態で発見されることが60〜80%と報告されています。手術療法は膵臓がんの治療の中で最も効果の高い治療であり、切除ができる段階で早期発見することはとても重要です。
早期発見する方法には定まったものはありませんが、膵臓がんを早期発見するためには、膵がん発症危険群に対して定期的に検査を行っていくことが効率的です。現在膵がん発症の危険因子とされているものには以下のものがあります。
膵がん診療ガイドライン2016年度版より抜粋して作成
これら危険因子に加えて、糖尿病の急な発症・増悪、急性膵炎なども膵がん発症に伴うことがあり、発見の重要な手がかりになることがあります。これらの方々から疑わしい方を拾い上げます。主に腹部エコーがその役割を担っております。腹部エコー検査でさらに腫瘤性病変、主膵管拡張、膵のう胞(膵臓にできたふくろ)、などを認めた場合に精密検査が必要となります。[主膵管拡張、膵のう胞は、膵がん発症に伴っている場合があり要注意所見とされています]
診断の手順を図に示します。膵がんを早期に診断する上でかかりつけ医の役割は、「危険因子の把握」、「拾い上げ検査」、「定期的な経過観察」、中核病院では「精密検査」、「治療」、「定期検査(CT、MRIなど)」と、それぞれの役割があり、かかりつけ医と中核病院の密な連携が不可欠となります。
※経過観察の方法、検査までの期間は、危険因子の内容等により異なります。
画像診断にて危険因子を評価する必要がありますが、膵臓を詳細に観察することは容易ではありません。膵臓は胃や肝臓の裏側にあるおなかの深くにある臓器なので、エコー検査で観察が難しい臓器です。当院では膵臓観察の精度、拾い上げの感度をより高くするために以下の取り組みを行っております。
リクライニング台を用いることで腹筋の緊張を軽減し、プローブを腹部の深くまで押し込めるため、より膵臓の描出がしやすくなります。また観察前に脱気水(空気の細かい泡を抜いた水分)を摂取し、胃内を水分で満たすことで胃内の空気で見えなかった領域の観察が可能となります。体位変化も行うことで、膵臓を重点的に観察できる方法となります。
※費用は通常の腹部エコー検査と同じです。(3割負担で約1500円程度)
腹部US検査で病変を疑われた後に行う、膵臓の精密検査の1つです。この検査における膵臓がんの存在診断の感度は92.3%と報告されており、CTなど他の画像診断と比較しても腫瘍の存在を確認するためには優れた検査となります。膵臓がんを早期発見する上で必要不可欠な検査になりつつありますが、手技の習得には専門施設での一定期間の習熟を必要とし、時間を要するために検査医が不足しているために、まだ十分に普及していない検査です。
小郡市内では嶋田病院が唯一超音波内視鏡が可能な施設であり、私がこの検査を担当させていただいております。当院での診療が主であるために、基本的に木曜日の午後(13時~)に嶋田病院で超音波内視鏡検査を行っております。都合が悪い場合には検査曜日の調節は可能です。(当院での検査予約も可能です。)
内視鏡検査の「超音波内視鏡」もご参照ください。
一般的な腫瘍マーカーと言われるCEA、CA19-9などは進行してから上昇する場合が多く、早期発見に有用ではないのが現状です。通常の腫瘍マーカーの測定も行っておりますが、当院では早期発見に有用とされている検査を、業者と提携して行っております。これらの検査で高危険群の結果となれば、診断の手順通りに検査を勧めていきます。まず採血検査によるリスク評価を希望される方はご相談ください。これらの検査は業者に委託するために自費検査となっております。
早期に危険因子を発見し、拾い上げることも大切ですが、膵臓がんは進行が速い病気であるために、適切な精密検査を作成し、迅速に実行することも非常に重要です。この点も地域中核病院と連携し、迅速な対応が可能となっております。危険因子を有する方、定期検査を希望される方、膵臓が気になる方などは一度ご相談ください。